小潮ノ月

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笠松、生きる

(1562)永禄五年  笠松、生きる
筆頭番頭の鶴蔵が、店や倉庫の内外にいる者達の内の主立った連中を玄関横の土間に呼び集めた。
土間は三間に五間ほどの広さがある。
十五、六人の男女が並んだ。
別に、番頭五人と、りょうを頭に三人の子供と、付きの女二人が板の間に座っている。
一人の女は鶴蔵の女房、もう一人は死んだ女将の妹である。
鶴蔵は元の上州屋主、亀治の弟である。
しばらくは鶴蔵が店を切盛りすることになろう。
その鶴蔵が皆に話し掛けた。

去年旦那様、今度あ女将さんど、二人亡ぐしてまった。
ここで我達がしっかりしねば、この店あ潰れでまうべ。
この上州屋の看板が無ぐなるんだば、我達にしろ松山の人達皆にしろ大損害だべさ。
どんどしてもこごさ居る、りょうお嬢様さ良い婿貰ってこの上州屋ば継がせねばわがね。
それまで皆して頑張べし。
そんでねが。
それまで我が引っ張らねばわがねたって、皆、協力して貰えねべが。
この通り頼むして。

皆、うんうんと頷いたり、やるべしな、などと喋ったりしていたが、三番番頭の与兵衛は白けた思いで聞いていた。

( けっ。どうせこの店ば乗っ取って手前で主さなる気だべ。死んだ旦那様のおんじだして筆頭やってるべたって、商売だば末のおんじの茂吉の方が上手だべさ。茂吉だば歳ずっと下だして五番番頭やってるったってな。)



持場に行こうとする笠松を、鶴蔵が呼止めた。

ああ、笠松。
お前、りょうお嬢様がら大した気に入らでいだべ。
二親亡ぐして寂しべして、手空いだ時さでも相手してやってけろ。
分るべ?

へえ。
そりゃもう喜んで。
わて、一生懸命お相手さしてもらいますさかい。

んだが。
だば、頼むじゃな。
面倒見でやってけろよ。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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