小潮ノ月

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笠松、生きる

(1562)永禄五年  笠松、生きる
今日はここまでや。

あらかじめ栞を挟めていた箇所までくると、笠松は日記と、大福帳を閉じて重ね、胸に抱いて襖を開けた。
女将は隣の部屋との間の敷居に立ち、向こうを向いていた。

女将さん、おおきにどうもありがとうございました。

あれ?

笠松は一間ほど横の床に、四角い札入れの様なものを見付けた。
いつものように胸の荷物を箪笥の引出しにしまうと、笠松は先程目に付いた物を手に取った。

灰汁色に染められた、柔らかく薄い革でできている。
女将の物ではない。
死んだ主も女将も、自分の持物には店の印の 仝 (ヤマエ)を書き入れている。
笠松が手に取った物には、どこにもその印がなかった。

女将さん、これ先程の方のもんやおまへんか?
女将さん?

女将の足先が揺れている。
鴨居から首に紐が掛っていた。
女将の顔が真っ赤にふくれて斜めにかしいでいるのを見た笠松は、たまげた。
あわてて廊下へ飛出し駆けた。
そして、向こうから来る相手が第一番頭の鶴造と女中のみちだと分ると、ほっとしたように声を上げた。

番頭さん、あ、あの、番頭さん、女将さんが、女将さんが。

笠松だば?
女将さんが、どした?

部屋の開けて中を見た鶴蔵はぺたりと尻を床に落した。

あ ..みち、みち。
笠松も。
誰が。
誰がば呼ばって来てけろじゃ。

つい中を覗いたみちも、仰天した。
すぐに顔をひっこめ、足をもつれさせながら廊下を戻っていった。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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