小潮ノ月

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笠松、生きる

(1562)永禄五年  笠松、生きる

女将さん、笠松でおます。

ああ、笠松。
お入り。
今日は、どうしてやんす?

今日の昼に着くはずの荷が明日になるさかい、小頭が一時ほど暇をくれたんや。
そんでまた、帳面見せてもらいにまいりました。

そうか。
うちは書き物してやんすから、そっちの小部屋使うてや。

女将のもとは近江の古着商の娘で、上州屋の跡取、亀吉に嫁いだ。
女将は立派な商人になりたいと言う笠松の熱心さに心を動かし、笠松が来たときには先代の日記と大福帳を見せていた。

( こんな大店になってからよりは、笠松の参考になるやろ。)

先代は三喜松と言い、上州屋の基を造った男である。
三喜松が子供の頃は、実家は金貸をやっており、裕福ではあったが評判は宜しくなかった。
もっとも、金貸という商売はどれ程顧客に慈悲を掛けたところで、貸した金を返して貰うときには,大概いい顔をしては貰えないものである。
それでかどうか、良く近所の悪童連中から川に放り投げられたりしていた。
三喜松は三男だったので、親から小金を貰って独立したが、金貸ではなく貧しい百姓相手に織機や綿の実を貸し、織り上げた布や糸を買上げて転売する商売を始めた。
その後、養蚕や材木など幅広く扱い、どんどんと店を大きくしていったのだった。

笠松は日記を見ながら大福帳の記述を確かめ、商売のやり方を想像するのだった。
そうするとまだ見ぬ場所の風景が頭の中に浮びあがり、あたかも自分が商っているような気持になる。
そして何時しか時の経つのを忘れるのだった。



隣の部屋で、女将と男の話す声が聞えた。
誰か来ている様だが気にも留めずに、笠松は日記を読みふけった。

..


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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