小潮ノ月

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御行捕物控

(1561)永禄四年  御行捕物控
最後に会った人が氏忠様だのす。
だもんで、旦那様が殺したんでねが、って言う人だば、ま、いねがど思うんだたってな。

作蔵が言った。
作蔵は小太郎という北条家の諜者の頭から由貴が頼んで来てもらっている男である。


由貴は脇に控えた女に顔を向け、後、小太郎にこう告げた。

この女人はりゅう言いまして、真田家の忍びなんどす。
申訳おまへんけど、おたくさんからも うちとこに誰か一人付けてくれやしまへんやろか。
よろしう、お頼み申します。
できれば男の人を。

へ?
はい。
それは、まあ。
よろしうござりますわな。

( わざわざ自分どごの諜者ば紹介するんだが。面白えな。)

小太郎は口端に小さく笑みを浮べたが、その後考慮に沈んだ。

( いや、上手え手だべ。この娘っこ、案外手強えがもしれねど。)


それで、誰もその家に入った者はいないんどすか?

へえ。
実は殺さいだ湊ちゅう女子、旦那様が通いしてだんだども、何処がの国の草だのさ。
そいで隣の家に此方の手の者が交代で何時も見張ってたんだべあ。

へえ ..そなの。
うち、その家、一度行って見てみたいわあ。

...

由貴と作蔵は湊とさよの住んでいた家の周りをぐるりと歩いた。
後ろを、顔をあちこち向けながら側女のみさとが背を幾分丸めて付いて来た。
ほら、家の周りさ枯枝、帆立の貝殻とが所々あるべ?
夜中でも誰が彼が歩けば、音っこするようにしてあるすよ。
それにほらこれ。

作蔵は小さめの窓に手を向けた。

こご見でや。
蜘蛛の糸っこ張ってあるべ?
入り口さ皆こったらの仕掛でるして、誰が入ればすぐ判るんだべお。

ふーん、成程な。
これならちょっと見気が付かんわなあ。



ここが、見張ってた家やね?
まあ、周りがよう見えるわあ。

んだべ?
あの日だばずーっと月あ出ずっぱりだったして。
だして誰も入れね筈だんだ。

そんでも女子一人殺められたんやな。

んだんだな ..



二人は一緒に家の中に入った。
作蔵より大柄なみさとは土間から中へは入ろうとしないで、背を丸めて奥を覗いていた。
板張の部屋の中央には花が添えられている。
鏡面のように黒光りした板に白い徳利と野花菖蒲が映っていた。

ここで寝ていた所をただの一突きだべなお。
腕は立つ者のようでございやす。

家は二部屋と申訳程度の小部屋しかないが、母子二人が住むには広すぎる位である。
奥の部屋には押入れと、ごく小さな書院が設えてあり、竹に雀の掛軸が下がっていた。
家の西側一間ほどの後ろには、漬物樽や大鋤などの納った掘っ立て小屋が建っていた。
壁には三面に、小枝や薪が小綺麗に積上げられている。

手掛りになりそうなものは、皆目見付けられなかった。

家の南側にある縁側を歩いてみる。
隣の家が垣根越しによく見えた。



作蔵はん。
長い、棒みたいなの有りまへんか?

長い、棒 が?
ああ、隣の家に槍が掛けてあったべ。
持って来るべの。



これでいがべがの?

短槍と呼ばれる、二間ほどの槍である。
作蔵は槍先の鞘の具合を慎重に確かめてから由貴に手渡した。

由貴は板間に槍を置いて、部屋の寸法を測りだした。

( この柱から押入れまで三回、と、こんだけ )



( 駄目や。中も外も同じや。)
由貴は顔を横に振った。

作蔵はん、これ、お返ししますわ。



由貴は板の間と土間の間に腰を掛け、二人に向って言った。

まあここいらへんで、お茶にしまひょな。

得たりと作蔵が竈に火を熾し、水を入れたやかんをかけた。
急に家の中の気温が上がったような気がした。
が、湯が沸くまではまだ暫くかかるようだ。
みさとはほっとしたような顔で、風呂敷包を開けて木箱のふたを取り、中を確かめた。
茶葉の入った棗と急須。
煎餅や干飯と、干物の入った包が二つ。
お香物。
湯飲み。
木皿。
布巾。
楊枝入。
箸。
小マキリ。
皆、在る。
本当は隣の家で休みたかったが、それは口に出せない。


はーあ。
なーんも、手掛りないなあ。

由貴の口から溜息がもれた。
何の思慮もなく、腰掛けたまま足を浮かせ、パタパタ振ってみる。

( 子供ん時、こげんしたっけな。ここはとと屋の台所と似とるなあ。)

土間の隅々上下左右を由貴の視線がふわふわ漂う。

みさとから貰った熱いお茶の入った湯飲みを手に小さな煎餅を一つ口に咥えた時、ふと土間の片隅に視線が行った。
炭俵が上に乗った敷板の、木口にちょちょんと張り付いた毛筋が二本ほど、柔らかな光の中に浮んでいた。
その先端が微かにそよ、そよと震えている。

( 風なんてちいともないのに。変やね .. )

由貴は湯飲みを自分の後ろに置き、炭俵と敷板を除けて戸の脇に置いた。
ゆっくりと手で土間の土を撫で寄せていった。
すぐに凹みが掌に感じられた。
その窪みは、四角い、人一人がようやく潜れるかと思われる大きさで現れた。

作蔵はん、ここ、お願いします。

ん。
後は、我さ任せで下せえ。



こごがら、入って来たんだべな。

ぽっかり空いた黒い穴を見詰め、作蔵が言った。
微かな、少し冷たい風が頬を通り過ぎた。

...

氏忠がつぶやいた。

我、覚えでだお。
湊あ甲斐の忍びだど、自分がら喋ったんだもんな。
我に申訳ねえしてって言ってよ。
だども、組抜げられねし、てさ。

それで、多分 ..

ああ、んだな。
始末されだんだべさ。

氏忠の胡座の中に納っていたさよがきょろりと上を眺め片手で髭を撫でていたが、その腕を胸に畳み、やがて口を半開きにして寝入ってしまった。
氏忠はさよの富士の御山のように反り返った鼻梁を眺める。
由貴が牡丹の赤い花弁がかしましい着物をそろりと掛けた。

― ― 了 ― ― 

明けましておめでとうございます。

ここを訪問してくれた方へは大いなる感謝とてんこ盛りの幸せを。
そうでない方にはそれなりの幸せを切に願うものであります。

今年は非常に良くない年になりそうですが、皆様準備は如何でございましょうか。


御行捕物控 ( おゆきのとりものひかえ) というお話でございます。
秋元順子さんがミステリー大好きというので書いてみました。
楽しめて貰えましたでしょうか。
ところで、前に私が関わった、とあるプロの男性ロック歌手がおりました。
犬老さんでしたっけかな? えらくこねくり回す歌い方をする人です。
チョイとしたいきさつで意見交換などするはめになったのですが、あの、菅元首相をえらく買ってましたっけ。
書込み欄でやりとりしていた後、メールでもやりとりしました。
結局彼の言いたいことは一つだけ。
俺の言う事を聞け。
とほほ。
ほんとに疲れました。
何をどう説明しても、どうしてもこうしても結局結論をそこに落とします。
ま、ガキンチョですかね。
見かけは立派。
ある程度の知名度があり、男前 ( 私よりは↓)。
コンサートもこなしているし、彼のホームページは賑やかです。
こういう大人(に見えるひと?)がおこちゃま程度の脳味噌を持っているってのに出会ったのは初体験です。
話には聞きますが、実際に、会うとビックリ玉手箱でしたよ。
でもねえ。
もうやあね。
( 結局、幼児のお守りに付合わされた ..のね、私。)
それでは一曲、 月の法善寺横町 の節でどうぞ。

 ♪ 中指一本 天井目指し 折目正すのは 男子の心意気 ~ 
  go on music, do and joy ?  ya, I fuq !

歌も生き方もシンプルが良いと思います。
第一、楽チンですから。
楽して楽しくできるだけ、要領あいそをフル活用で、たんまり見返り貰いませう。
頑張る、努力、 ど根性! なんぞ馬に蹴られて死んでまえ~っ。
ってのが、私の前立でございます。

2013年の漢字は輪でした( 二日前にちら見しました)。
首輪の、わ ですか?
私のは 我 ( わ、わぃ:下北言葉 )です。
我が、一番大事。
皆さん、そうではないのかなあ。

さて。
えらく厳しい渡世になるであろう今年以降の道程のほど々。
寒立馬の如く逞しく優美に、保運豊穣風雅颯爽、頑健堂々道行を駆け抜けたいものであります。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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