小潮ノ月

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川中島 

(1561)永禄四年 川中島 

妻女山へ向った別働隊が戻り戦闘に加わって以降、形勢の悪かった武田軍の勢いが上杉軍を圧倒し始めた。
上杉軍は戦を手仕舞いに掛っている。

よくやった、源五郎。

真田源五郎はこの時、本陣で信玄の近くに有り、近習衆の一人として参戦していた。
まだ前髪がある。
初陣であった。
信玄が政虎と相見えた時、近習の三分の一程は、鬼神の様な政虎の勢いに飲まれ後ろに退いたのに、少しも動ぜず脇を固めていたのを誉められたのである。
その時、源五郎は初めて見る馬上の政虎に、ある意味酔いしれていた。

あれが、政虎殿か。


追う武田勢と、退却する上杉勢。
敵も味方も共に必死。
追撃戦の直中に真田軍も加わった。
遠くから鉄砲の音が聞えた。

よし、ここいらだったな。
信綱。

は。

深井、木村。
海野、加茂。
ついて参れ。

幸隆は騎馬六騎で少し小高い丘に上がった。
退却していく上杉軍と追う武田軍の様子が望まれた。
上杉軍の先頭は既に犀川を越えて善光寺に向っているが、殿は犀川を防御陣にして、迫り来る武田の兵を防いでいる。

これは、逃げられたな ..

翻って、本陣辺りを眺めると、惨憺たる様子である。
( 昌輝、源五郎 ..)

信綱、ぬしならどう動く?

答を待たずに幸隆は言った。

よし、皆。
隊へ戻るで。

幸隆は味方の軍勢を一つに纏めて上杉軍の殿に左横から迫ろうとした。
敵正面より下流の、手薄な場所を一気に渡河し、守備陣の横腹か背後を襲う策である。
放たれた矢を避けつつ、横を見た。
信綱の姿には疲れの色が浮んでいるが、著しい興奮の末に浮ぶ朱と血の赤とで混じり合い、顔色では区別できない。

左手前から鉄砲の轟音が次々に鳴り響いた。
構わず、突進む。

( ここからは我が真田軍の、鬼弾正の見せ所やで!)
行け!進め!


幸広は自身の頭が突然鈍く揺れたのを感じた。
浅緑、朱灰、薄茶の靄がゆうらり視界を通り過ぎる。
どすん。
遠くで音がした。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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