小潮ノ月

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幸せ芝居

(1559)永禄二年  幸せ芝居

二日後、華那は海野家の三男、四郎と三三郎の剣の稽古を見ていた。
海野四郎は長兄の十四郎と同様に、体格が良くて剣もなかなかに厳しい。
華那と四郎との手合は、始めの頃は華那も善戦するのだが、いかんせん体力差はどうしようもなく、後半はいい加減にあしらわれるのが常であった。

三三郎の動きは、変っていた。
例えれば、メダカや小鮒の群れが何かに逃げるような時の瞬間の変り身。
華那には三三郎が相手の剣先を簡単に躱しているようにしか見えないのであったが。

( 足運びが大事、か・・ あれ、踏ん張ってないやん。力、入れてないのやろか? )
( 剣は、舞と一緒? 舞は腹が胆やけど。確かに足を踏ん張ってしもうてはあかん、よう舞われへん。 三三郎様の言うた、居着いてはならんて、このことやろか・・ )

いつの間にか四郎が打込まれていた。
四郎は何やら、戸惑った顔をしている。
三三郎の動きは緩やかで、それ程動いたと見えない様のだが、ある一瞬からの動き方が違う。

( あれ、うちとの手合せと同じ動きやろな。四郎様の目からも、途中から三三郎様が消えてるんやろな、きっと )

・・・

肉を切らせて骨を断つ、言いますんやけど、最後の最後まで目をつむってはなりまへん。
人はなあ、恐れなんかで体が固まると、良い動きはできまへん。
そのまま斬られてしまいますよって。

丹田に力を溜めて。
他の所、肩とか目とかは力を抜いて。

三三郎は、歩きながらすい、すいと方向を変えて見せた。



ちょいと遊びまひょ。
わてを捕まえてみなはれや。

華那は三三郎と半間の間で対した。
華那が進むと、同じ間合で左か右に避けられる。
華那が止ると相手も止る。
捕まえた、はずの腕の先には、相手はいない。
空を掴む事を何度か繰返した後、三三郎が両掌を前に出し、ゆっくり動きを止めた。

心にも、力を入れたらあきまへん。
そやな、己を見る心を、もう一つ持ちなはれ。
離れた所からじっと観てるのや。
相手に負けん強い心と、静かに己を見る心と、二つを持つんやで。

・・・

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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