小潮ノ月

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幸せ芝居

(1559)永禄二年  幸せ芝居


華那は、両頬を膨らませ、不機嫌な顔をしている。

( 姉様達、口吸(ちゅう ♡ ) するととーってもいいうか、天にも昇る気持になる言うたのに・・ そんなこと、ちょーっとも、何んにも、なーんとも、ならへんやん。華那も少しは女らしうなる、言うて貰うてたのに。さっぱりやんか。)

どこが、やの、もう!

( ふふふ。まあ、まだまだやな。)
何やらぶつぶつ言っている華那を横目に、三三郎は懐から笛を取出した。

薄月の白雲。
狐の嫁入り、とも、言いますねん。
これからその一曲を。

へえ・・

三三郎の笛から風が、流れ出た。
静かに、さりとて弱くはなく。
梢に掛る蜘蛛の糸を揺らさぬように、さやかに。
やがて。
やがてその音は雨になり、空の虹になり、小狐供の騒がしさになり、花嫁行列の華やぎになり、山々の木霊になり、そして。
白雲が流れ、風の音は、るる、朗々と、高く低く。
出会い、別れ、また出会い、それが・・
狐の嫁の袖を伝う涙になり、やがて、二匹の唱に変った。
赤く、燃える命。
強く、もっと強く、そして、優しく。
もっと・・もっと激しく・・ 燃えよ、炎。
やがて。
やがてそれは軽やかに流れる清流の音色に溶け合う。

華那の目から一筋、涙がすうと頬を伝い流れた。
華那は、動かない。
そのまま・・
けれどまた一筋。
また、一筋、と流れる滴。

華那は、何とも形容しきれない切ない思いに浸っていた。
今まで味わった事のない、この気持。
思わず胸をかき抱いた。

・・・

三三郎の笛に合わせて華那が空で謡う。

・・ 結ぼれたる 思ひをば 
解けて寝た夜の 枕こそ ひとり寝る夜の 仇枕 

( 袖は片敷く つまじゃと云ふて 愚痴な女の心と知らで 
しんと更けたる 鐘の声

夕べの夢の 今朝覚めて  
床し 懐かし やるせなや 

積もると知らで 積もる白雪 )

華那の目は前を見ている。
ただ涙がぼろぼろと、頬を伝い降りていた。

・・ 三三郎は正直、困った。
目の前の、華那がどうしようもなく愛しい。
そっと、華那の横顔を見詰めた。
なのに突然。

( うわ、これ、これ、鬼姫、待たんしゃい、もう。)

華那の手が三三郎の首をしゃにむに抱き、かき抱き、やがて、我身を預けた。

三三郎様、うち、もう・・・

・・・

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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