小潮ノ月

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小田原へ

(1558)永禄元年  小田原へ
早朝本原の館を出立した一行は、伊勢山からの荷駄隊と合流し、小諸城下を過ぎて、昼前には佐久平に着いた。
荷駄と護衛は武田の詰所に入ったが、幸広の一行はそこから五,六軒ほど過ぎた飯屋で昼食を取る事にした。

供の滋野瑛哲と芳蔵は店の前の長床机に陣取り、荷駄が見えたら知らせるという。

〈 気を使ったんかな。〉
幸広は有難いような、こそばゆいような少々落着かない気分であった。

店の中には既に客が十人程いて、ほとんどが飯を食べたり椀の酒を飲んでいた。
奥は旅籠になっているが、客のいる気配は無い。
芳蔵が店への注文のために、皆の希望を伺い聞いた。

奥方様は酒、どうでっか?
いける口なら頼みまひょか?
旅っちゅうもんは結構疲れますんで、酒飲むと元気出ますよって。
周りの人も、結構頼んでますやろ。

いや、槻乃様はまだ、よう飲めへんよって、甘酒のほうを頼む。

はい、その様にして下さりませ。

芳蔵が店の女将に注文を伝えて戻る途中、店に入ったもう一人の女の客を見た。
女は四角い竹篭を下敷に風呂敷包で纏めた荷を背負子に括り傍らに置いている。

〈 確か角田の百姓の、午六の嫁やった。名は、なんて言うたかな?桜やのうて梅やったな。 〉

瑛哲の隣に腰掛けると、幸広がやって来た。

旦那様、奥方様を放って置いて、よろしいんでっか?

ちょいと、打合わせておきたくてな。
すぐ戻るよって。

じゃあ、わてはあそこの女んとこでちょっと話してますよって。
あれ、角田の午六の嫁でんねん。

店の女将が十日程前から給仕に出している自分の娘に言いつけた。

さど。
先に座った、一人で居るおなごが酒、連れの男どいるおなごが甘酒、男達あ三人皆酒だはんでな。
こいどば持って行って置いでこへ。
後がら飯どば持だせっから。
あー、忙しじゃ、忙しじゃど。
おど、おがんず出来でらがー?

そう言う女将の口元は少し緩んでいた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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