小潮ノ月

SD(ボークス社)に関するブログ

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生き倒れ

(1544)天文十三年  生き倒れ 
甲斐府中から川を渡った、商家の連なる通りの一軒、飯や酒を出す店から出てきた女が声をかけてきた。

あらまあ、真田のお殿様ぁ。
お久しぶり。
ここんとこ、す~っかりお見限りじゃあございませんこと?
あ、た、く、しぃ、寂しうてなりませんでしたのよ。

女は幸隆の袖を引き腕を抱きつつ、しなをつくった。

陽那にとっては滅多に見ない賑やかな場所なのでつい遅れ気味になり、それでも幸隆の後ろを付いて来てはいた。
そして陽那は、その女を見た途端に吐き気を覚えた。

お殿様ったら、まあ暫く会わないうちに御立派になられて。
聞きましたわ、随分お手柄を立てられたそうで。
奥方様もさぞや鼻が高いんざましょうね。
ん~憎いお方。
あたくし、ヤキモチ焼いてしまいますわ。
うふん、つねっちゃおうかしら。

女が薄桃色の舌先を唇の端からチロと出したのを見た陽那は、頭に血が昇った。
何気なく二人に歩み寄ると、石にでもつまずいた体を装い、体を幸隆の肩に投げた。
その弾みで、反対側の肩が女の鼻っ柱に入った。

むぎゅう・・

女は、顔を押えながら地面にひっくり返った。

あら~、すんまへん。
うち、どないしましょ。
かんにんえ。
ねえさん、大事おへんか?

陽那は急いで女のもとに駆寄り抱きかかえ、心配そうに顔を覗きつつ、介抱をし始めた。

幸隆としては、一刻も早くこの場を立去りたい、と願ったのであるが。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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